町長コラム

リーディングスキルテストを受けてきました  2019年12月10日掲載

「・幕府は、1963年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
  ・1963年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
以上の2文は同じ意味でしょうか。もちろん、答えは『異なる』です。けれども、中学生の正答率は57%に留まりました。」
『AIに負けない子どもを育てる』(新井紀子 東洋経済新報社)
 これは、30万部を超えるベストセラーとなった『AI vs.教科書が読めない子どもたち』の続編『AIに負けない子どもを育てる』の一節です。私は、2017年1月、新井紀子教授(国立情報学研究所)の「高校生をはじめとする子どもたちの多くが、教科書を読めていない。」という講演に衝撃を受けました。そこで、2018年12月に雄山中学校の生徒の読解力を測定するリーディングスキルテスト(RST)を実施しました。そして、2019年2月、学校の先生方に立山町民会館に集まっていただき、その分析結果を踏まえて、新井教授に講評をお願いしました。

 私は、2006年1月の町長選挙出馬にあたってのマニフェストに、「教育予算の確保とともに、教育は『上の上』を目指します。(一部抜粋)」と書きました。そして、直近の選挙や町長方針においても、「学校教育環境と基礎学力は県内トップクラスを目指す。」と掲げております。
 そのため、固定資産税率をアップしてまで施設整備を進め、県の小学校長会の会長も務めた大岩久七氏を教育長に迎えました。大岩教育長の提案に基づき、多人数教室に教師OBを補助教員(スクールケアサポーター)として町単独費用で配置し、中学校ではランチルームで大学生による放課後学習教室を開催するなど、他の自治体に先駆けて取り組んできました。
  現場の先生方のご努力により、全国学力テストでは、小学生の平均点は、平成23年以降、常に県平均をかなり上回っています。しかし、残念ながら、雄山中学校では同じようにはとれていません。RSTの結果を受けて、新井教授は「『定義を読んで、抽象的な概念を理解する』ことと、『論理的に考える』ということが十分できていないのではないか。」「小学校でプリントやドリルをさせすぎたりした結果、『見かけの成績』が上がる一方、…」と話されました。私は、中学3年生の頃から、それまで得意だったはずの数学の問題文を読むこと自体が億劫になり、高校ではさっぱりダメだったことを思い起こしました。

 そこで、先月、東京で開催された「リーディングスキルフォーラム2019」の一環として実施されたテストを、私は受けてみました。Wi-Fi環境のある大教室で、200人を超える大人がタブレットで受検します。受検者それぞれの回答状況に応じて、設問が変わっていきます。これがAIのなせる技なのでしょうか。終了後、そのタブレットの画面には、偏差値と、今後、仕事上で留意していくべきことなどが表示されました。どれも、思いあたることばかりでした。

 経済開発協力機構(OECD)が、2018年に実施した「国際学習到達度調査(PISA)によれば、「日本は『読解力』が15位であり、前回2015年調査の8位から大きく順位を下げた。」と、12月4日の新聞各紙で大きく掲載されていました。新井紀子教授のコメントも掲載されています。
 この日の午後から、私が座長となる総合教育会議(教育委員5名が出席)があり、今年、町で実施したリーディングスキルテストの結果について、ご意見を伺いました。現場の声としては、各教室にWi-Fi環境とタブレットがないため、セッティングに手間がかかったこともあり、否定的な意見が多くありました。会議では、「今後、プログラミング教育もしなくてはならず、先生は忙しい。お金もかかるし、次年度のテストは見送ったらどうか。」とする意見が大勢でした。
 小学校の先生やOBやOGにとっては、「我々は成果を挙げてきた。」という自負があると思います。しかし、それなら、新井教授が「立山町の衝撃」とまで書かれた推論を否定できるまでの根拠が揃っているとは思えません。私は、「プログラミング教育が必修化となったのは、経済界がそういう人材を欲しており、安倍政権に要望したためだ。それはほどほどにしておいていい。子どもたちの将来が決まってしまうかもしれない(時期)、中学校(での学力)が重要なんだ。」と自分の思いを述べました。