宿泊税の検討を始めました(2025年9月26日掲載 )
宿泊税の検討を始めました
9月19日に閉会した議会定例会において、宿泊税の導入を検討する外部委員会を開催するための委員謝礼と旅費等21万4千円を含む補正予算案が可決されました。
立山黒部アルペンルートが位置する中部山岳国立公園には、毎年、多くの観光客や登山者が訪れています。室堂周辺をはじめとする登山道の多くは、かつて国と県が整備したものですが、その木道やベンチ、道標などの老朽化が著しくなっています。そこで、私は最低でも生命に関わる道標については、急ぎ更新しなければならないと考え、令和2年度から毎年1千万円程度の事業費、うち環境省から1/2の交付金を得て、更新作業を進めてきました。
令和8年度についても、かつて黒部ダムの建設資材を背負った歩荷(ぼっか)さんが通った一ノ越黒部湖線にある道標や地図看板の更新を予定しています。それでも、室堂から一ノ越区間の休憩地点には朽ち果てたベンチが残っていて、学校登山の子どもたちが見てどう思うだろうかと、情けなくなってきます。
また、立山町では、シーズン中は室堂に救急車1台と3名の職員を配置しています。その費用の一部は県に負担していただいていますが、残りは町の一般財源で賄っています。
近年、高齢化と猛暑のため、平野部では熱中症による救急要請が増大しており、救急要請が重なると、非番員を招集、つまり、休日出勤してもらうことによってカバーしています。現場からは消防職員の増員、そうでなければ、室堂での救急隊配置をやめてほしいといった切実な訴えが私に寄せられています。となると、立山室堂周辺の観光客の救急対応を考えたら、選択肢は職員の増員しか考えられません。
立山黒部アルペンルートには、令和6年度は82万人の観光客・登山者が入られました。しかし、救急車の配置費用を賄えるだけの税収効果はありません。市町村の基幹税は、土地や建物等にかかる固定資産税です。北陸新幹線が開通して以来、JR富山駅周辺にはホテルの建設が続いています。これらのホテルには、アルペンルートを目指す方が前泊され、あるいは長野県扇沢駅からアルペンルートを通過した方が大勢、泊まっておられます。一方、国立公園内にホテルを新たに建設することは、ほぼ不可能です。
こうした財政面に関して同じ悩みを抱えている自治体は、全国に多数あります。立山町長が副会長を務めている全国観光地所在町村協議会や全国町村会においては、「普通交付税の算定に当たっては、観光地所在町村の財政需要を反映した単位費用や補正係数の引き上げを図ること。特に、消防費、下水道費、清掃費等を補正要素として、…」と、毎年、政府に要望していますが、進捗していません。
もちろん、観光産業はごく少数の町村(注意1)を除いて町村レベルでは税収効果は期待できないものの、広域的にみれば、経済効果は大きいものがあります。8月29日、富山地方鉄道の立山線存続の要望に県庁を訪れた3団体に対し、新田知事が「富山県の観光にとって重要な役割を果たしている」と発言されたそうです。「アルペンルートの入込客82万人のうち、10万人は立山線を利用している」と立山黒部貫光株式会社の社長は話されています。
富山地方鉄道株式会社が保有している線路や枕木の交換をはじめとする安全対策にかかる費用については、国・県・沿線自治体が1/3ずつ負担しています。同社が廃線を検討している岩峅寺から立山駅までの区間については町民の利用が極端に少なくなるものの、存続の方針が決まれば、安全対策に関わる工事を加速させ、立山町も延長距離に応じて負担していかねばなりません。
かといって、財政力指数(注意2)0.459(令和5年度)の立山町では、予算の使途の拡大に限界があります。また、観光に関連する設備は、町道とは異なり、町民の多くが利益を享受しているとは言いきれないところがあります。
そこで、外部有識者等で構成する「立山町宿泊税導入検討委員会」を設置し、導入の妥当性、目的、使途、納税義務者、対象となる宿泊事業者等の課税要件について、幅広い観点からご検討いただきたいと考えています。もちろん、宿泊事業者をはじめとする観光関連の事業者、町民の理解が何よりも必要であり、議会の議決がなければ導入することはできません。検討の状況については、議会等を通じて、適宜、お知らせしてまいります。
注意1 ホテルや旅館が多い箱根町の財政力指数は1.301 (令和5年度)。税収の7割が固定資産税収入です。
注意2 財政力指数 数値が高いほど、その地方公共団体の財源に余裕があること
この記事に関するお問い合わせ先
- より良いウェブサイトにするために、みなさまのご意見をお聞かせください。
-











更新日:2025年09月26日